最近のお施主様はとても良く情報収集をされていらっしゃって、しかもインターネットで最新情報を素早くキャッチされますから、メーカーの説明会より先に情報が知れ渡っていることも珍しく無くなりました。
しかし、一方で間違った情報が流れているのも事実であって、その説明に苦労することもしばしば…。その中でも、インターネット上で多くの情報が飛び交い、情報が交錯しているのが、ペアガラスの密封空気の対流についてではないでしょうか。
ペアガラスにおける対流と断熱性能の関係は、ずいぶん昔から明らかになっていて、密閉空間になっているペアガラスでの性能曲線は、空気層12mm位までは二次曲線的に上がっていきます。12mm~25mm位までは緩やかに上がっていく感じ。25mm以上40mm位までは凄く緩やかに上がる感じとなります。40mm以上は対流影響が大きくなるので、窓の大きさによっては低下もあり得るとの感じです。
ただ、これは乾燥空気での話。今までは乾燥空気が一般的でしたので、トステムは特に12mm空気層にこだわっていたと思います。
しかしながら、最近はアルゴンガス封入が増えて、寒冷地では標準的と言っても良いようになってきました。アルゴンガスは、比重が乾燥空気より3割ほど重く、動きにくい性質のため、熱伝導が悪く、対流が起こりにくい物となっています。これを封入することが多くなったために、最近の高性能サッシは15~16mm空気層が多くなりました。これにより、普通のトリプルガラスサッシに匹敵する性能が出るようになってきました。
ペアガラスが15~16mm空気層&ガス封入が一般的になってきたことで、トリプルガラスサッシも各社ガス入りを標準化して、差別化を図っています。しかし、3枚ガラスが入る為に、枠の厚みがタダでさえ厚くなってしまっているので、12mmの空気層を確保するのが限界になっています。物によっては9mm~10mmの物もあるようで要注意です。(数年前の国産トリプルガラスは空気層6mmが一般的でした)
確かに、ガラスが三枚ある事、二つの空気層にガスをいれる事で、ペアガラスには無い断熱性と遮音性を出してきているのは事実です。しかし、ペアガラスでも相当に重くなっているサッシ。3枚になれば1.5倍です。単板に比べれば3倍です。これだけの重量を支えるというのは、かなり負荷が掛かることでもあるのを認識しておく必要があると思います。直ぐには不具合が起きるわけではありませんが、開閉動作の重さや、ヒンジ等への負担はかなりの物です。
また、最近は断熱性能重視で、アルゴンガス全封入の上に、Low-eダブルコーティング…という全部盛りの製品が出てきました。確かに断熱は良いかもしれませんが、日光の透過率の低さは驚くべき物で、このサッシを使うことで、太陽入射がクリアできない事も多いようです。ペアガラスのガス入り、LOW-Eでも熱線の入射は半分程度に落ちるのですから、トリプルになってしまうとどうなるのか…一日中暗い、北欧の冬なら良さそうですけど、八ヶ岳の冬には不釣り合いな製品になっている様に思います。
開閉の少ない窓や、季節風を受ける窓、騒音を避けたいところへはトリプルガラスを使うと効果的でしょう。一方で、日光を取り入れたい所や、出入りの多い場所などにはペアガラスを使用するのも方法です。それぞれの特性を良く理解し、適材適所で使用していく事が、省エネで省資源、快適な家造りの王道です。
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