建物を計画する上で悩ましい物の一つに屋根材があります。オルケアの事務所の屋根は『美しい屋根2007』にも選ばれていますが、これはかなり趣味性の強い屋根です。素材自体はそんなに高額な物ではありませんが、恐ろしく手間がかかり、職人さんにやってもらうには勇気の要る金額になります。
八ヶ岳の様な気候では『ガルバリウム鋼板』という合金の鋼板葺きが多くなりました。ただ、これにも幾つか種類があります。
まず定尺品と言われる一定の長さに揃った既製品を使用するパターン。これは工場加工をした物を組み合わせて使うために一番お安くなります。ただ、屋根面に継ぎ手が発生するのが致命傷。雪落ちが悪かった場合にはすが漏りと言われる、毛細管現象と凍った雪がダムになる事で起こる水漏れの心配があります。
次は、現場で鋼板を折り曲げ加工機で成型して使う工法。これを使えば屋根の途中での立て継ぎが無くなります。オルケアではこのやり方を基本にしています。建物の幅に合わせて引き抜き折り曲げ加工をしますので、一枚物で葺いていけます。
さらにガルバリウム鋼板に一手間加えた物があります。さざ波加工と言って、雨が落ちる縦方向に浅いV字溝を折り曲げ加工をした物があります。これにより、雨水が面で流れることを無くして、筋で流すことで唐松の葉を出来るだけ押し流す方向に工夫した鋼板です。但し、折り曲げ加工が大変になるので、現場での引き抜き加工品に限られるのが一般的です。これもオルケアでは標準採用しています。雪の滑りも良いみたいです。
また、ガルバリウム鋼板では通常0.35mmを使用しますが、見た目の綺麗さを重視して0.4mmを使うこともあります。厚くなる分、素材も高くなりますが、加工機も台数が少ない上に使用料も上がるので、オルケアではこだわりのあるときにしか使っていません。性能上は大きな差は出ません。
色目ですか?八ヶ岳の自然において、車のタイヤが黒で落ち着くのと一緒ではないでしょうか。黒が自然の風景にとけ込んで違和感が無いように感じています。締まりますし。でも、色々な色目がメーカーからは出ています。でも、紫外線のきつい八ヶ岳では、余り鮮やかなのはお薦めしていません。褪色が気になると思います。
この他の屋根材では瓦という選択肢があります。確かに半永久的な素材でもありますし、風格も格別です。ただ、瓦は半端な重さではありません。大体一般的な瓦で㎡あたり40~50kgというのが一般的です。一方でガルバリウム鋼板は㎡あたり4~8kgです。オルケアの建物では屋根面積が普通でも120㎡以上有りますので、5t~6tの重さを屋根に乗せるのか、600kgぐらいで済ませるのか、大きな違いが出ます。構造上は、耐震性等を計算して設計をしますが、一番上でそれだけの重さが揺れるのは非常に大きな負担であることは事実です。また、ガルバリウムに比べ瓦は若干高くなります。25%~30%upと言った感じです。
オルケアでは、雪落ちの良くない金属瓦などは現在採用を見送っています。八ヶ岳の気候においては『つらら』は非常に危険であり、屋根上で雪を溶かすやり方は出来るだけしないようにしています。もう少し研究をしなくては、ならないと思っています。
残念ながら、寒冷地においてはコロニアルのような素材は使うことはありません。やはり、気候にあった素材という物が重要です。お好みと、予算に合わせて的確な素材選びが重要ですね。
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