気密住宅なんて不健康な建物…なんて揶揄されますが、気密のない家ほど快適性が大きく損なわれ、折角の断熱も機能せず、24時間換気も機能しない、もったいない家になってしまうのです。
建物の性能を表す数値では、断熱性能を表すQ値と気密性能を表すC値が主に使われます。Q値は設計段階のスペックで決まります。C値は主に施工精度で決まります。
Q値がいくら高くても、C値が低ければ性能は発揮されません。なぜなら、すきま風によってどんどん外部からの冷気が供給されるからです。場合によっては、24時間換気の逆流…なんて恐ろしい事も起こりうる様であります。たとえば具体的なデータとしては旭硝子さんのホームページにもでています。これにより、中途半端な高気密住宅がいかに快適性を損なうのかよくおわかり頂けると思います。家の中を汚染された空気が駆け巡るわけです。
きちんと気密がとれれば、この様なことなく、計画通りの空気が流れ、新鮮で快適な空気が常時やんわりと流れる住空間が実現できるのです。旭硝子さんのデータでは、理想的な場合がc=1.5に設定されていますが、北海道での実験だとc=1.5でも排気口から排出される排気量の60~70%程度しか吸気口から入ってこないとの実測があります。理想的にはC=1以下を狙い、80%以上の空気が吸気口からスムースに給気されるようにしなくてはなりませんね。
実は気密測定士の方々は皆さん解っているはずなんですが、ちょっと理論的にQ値とC値の関係を紐解いてみましょう。実は、国の次世代省エネ基準は全くのザル法で、Q値を気密性能によっての補正まで考えなくて良くなっています。そのため、建築業界にも正しい知識が浸透せず、間違った理解や解釈が今でも続いているのが実情です。
設計上のQ値がでていても、気密がなければ漏気によるロスが出てくるのは、誰でも解ること。ところが、この漏気の影響を理論的に解っている専門家は殆ど居ません。今日は、触りだけですが、この影響を実際のモデルデータを元に説明します。(こんな事まで突っ込んだブログは殆ど無いはずです)
例えば気密性能をC=2としましょう。八ヶ岳でC=2を実現している建物はまだまだ少数ですが、冬場の風比較的強い八ヶ岳、この程度の気密では大きな影響を受けてしまうのです。圧力の計算等を列記しても、無意味なので、ざっと計算します。外部で風速8mの風を建物が受けたとすれば、床面積50坪の総二階と想定し、天井高を2.5mと想定した建物では、実に一時間に300立方メートル以上のすきま風が吹き込む計算結果が出ます。そうすると内外温度差が30度を超えたときには3000キロカロリー以上の熱損がすきま風で発生してしまうのです。(例えば、外気-10度、室内20度設定)これだけで補正Q値は1.5以上悪くなる計算になります。1時間に3000キロカロリーという熱量はすさまじい物で、小型のファンヒーターがフル回転してやっと補える熱量なのです。北海道で要求される目標数値でさえ、風が吹けばここまでの影響が出るのです。
見かけのQ値だけに頼っていては本当の性能が見えない事実。気密性能がいかに重要かおわかり頂けますでしょうか。断熱は良いけど、気密は中気密で…これは全く間違った知識から生まれた物なのです。きちんと、断熱のことを勉強すれば、気密と断熱が二人三脚であることは一番最初に根底として存在することであることが解ります。
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